こんにちは、カナダの高齢者ケアホームで介護士(Resident Assistant)として働いているTofu【@eigodekaigo】です。
介護士の仕事に対するイメージは、一般的に「給料が低い」「肉体的にも精神的にも大変」というネガティブなものを抱かれることが多いかもしれません。筆者もその認識を否定はしませんが、それが介護の仕事の全てではありません。
介護士として働く中で、"介護士になって本当に良かった!"と心から感じる瞬間が多くあります。社会に貢献できる充実感や、感謝の言葉をいただく喜びは、日々の仕事の中で実感するものです。介護は大変なことだけではなく、人との関わりを通して成長できる、素晴らしい職業だと思います。
この記事では、カナダで10年間介護士として働いてきた筆者が、その中で感じた"介護士になって良かった!"と思える瞬間を紹介します。これからカナダで介護の仕事を検討している方や、介護士の学校への進学を迷っている方の参考になれば幸いです。
筆者がカナダで介護士になるか迷っていた当時、相談できる相手がいなかったため、インターネットの情報だけが頼りでした。その経験から、同じように悩んでいる方々に、少しでも有益な情報をお届けできればと思っています。このブログが、皆さんの一助となれば幸いです。
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カナダで介護士をやっていて良かったと思うこと5選!
介護士になって10年目の筆者ですが、これまで入居者と同僚達とかけがいのない時間を過ごしてきました。介護の仕事を始めるまでは、親が祖父母の介護をしているのを傍らで見ていたくらいで、全くと言っていいほど介護について知識も経験もなく、未知の世界でした。ましてや、その"介護"を英語を使ってするなんて10年前の私には想像もできないことでした。そんな自分が苦労もしながら10年も続けてこれたのは、介護士として働いて良かったと感じることが多かったからです。その中でも強く良かったと、筆者が感じることを5つ選んでみました。
人のために働ける"喜び"を実感できる!
介護士の仕事は、肉体的にも精神的にも大変です。しかし、その大変さが1番吹き飛ぶ瞬間が、入居者から「ありがとう!」と笑顔で感謝される時です。
毎日同じ入居者を担当していても、1日とて同じコンデション、同じケアはありません。日々彼らの健康状態を観察しながらケアをし、少しでも異変を感じればナースに迅速にレポートをするのが私たち介護士の務めです。
シフト中に担当する入居者は1人じゃなく、15人以上にのぼります。私たちの相手は生身の人間、ケアに協力してくれなかったり拒否したり、一筋縄でいかないことも多々あります。たとえ時間が押してしまっても、自分のシフト時間内に、責任をもって担当を任された入居者のケアに取り組まないといけないので、精神的ストレスを抱えていることも多いです。
そのような労働環境の中での、入居者からの笑顔の「ありがとう!」は、とても嬉しく心が和み、その一言だけでシフトを最後まで乗り切れることもあります。
入居者を訪問している家族からの「ありがとう!」も嬉しいです。私は家族同様に入居者のことを思って接しているので、どんな些細なエピソードでも、家族と喋る機会があれば報告しています。家族は大切な人のことを知ることができるので、とても感謝してくれます。日々の暮らしが忙しくて、なかなか訪問できない申し訳ない気持ちを抱える家族も多いのは、私たちも充分理解しています。だからこそ私たち介護士が代わりにいるのだし、家族以外の人々も高齢者を支えていければ、社会は更に安心して暮らしていけると思うのです。
"人"のためは、やがて"自分"のため・・・・そう実感させてくれるのが介護士の仕事です。
先日筆者が休暇を取ることを知った入居者の一人が、「あなたがいないと困るわ~、寂しいわ!」と言ってきてくれました。なんと心温まった言葉でしょう!入居者に信頼を置かれていると感じる時は、仕事にやりがいも感じます。
ヘルスケアの知識が身につき、身内の介護にも役立つ
カナダで暮らして何が不安や心配かと言えば、やはり病気や怪我をした時の英語での対応です。介護士になってから、ドクターやナース、医療従事者との交流も増え、カナダのヘルスケア事情や医学用語も随分と分かるようになりました。筆者の職場には常勤のナースがいるので、健康状態で気がかりなことを気軽にナースに相談できることも、非常に有難いです。
カナダで介護士になるまでは、ドクターとのやり取りや薬剤師に薬をオーダーすることは英語が分からず緊張するし、大の苦手でした。今では仕事を通じて同僚ナースから彼らへの対応&英語での会話フレーズを学ぶことが多いので、落ち着いて対応できるようなり、コミュニケーションにも自信が持てるようになりました。
介護の仕事は、入浴介助、食事介助、移動介助(車椅子やリフトの使い方)・・・・など、様々な技術も必要とされます。この技術は職場だけの技術だけでにとどまらず、身内の介護にも役立てることができるのが嬉しいです。実際に身内が道で転倒し入院騒ぎになった時や病気の時も、大いに仕事での経験と知識を、そのサポートに発揮することができました。友人や知人からも"介護"や"健康”についての相談も頻繁にされるようになり、これまで以上に自分の立場を確立できたことで、自分の"生きがい"にも繋がっています。
筆者のブログを読んでくれている層は20-40代が多く、まだまだ親の介護には縁がない人が多いと思います。しかし介護の知識、特に海外で暮らす人々の英語で介護の知識や情報は、将来お役に立てる時がくると思っていますので、皆さんの頭の片隅にもで、こんな英語で介護のブログを書いている人がいたなあと覚えててくれれば幸いです。
チームワークとマルチタスクが得意になる
介護の仕事はチームワークが常に求められ、そして同時進行でタスクをこなすマルチタスクが要求されます。高齢者施設で働く筆者は、常に同僚とコミュニケーションを取り、スムーズに仕事が進むようにしています。
例えば、15人以上の入居者をシフト中に任されていますので、1人のケア中にナースコールが鳴ったら、すぐに飛んで行けません。誰か同僚に電話をして、様子を先に見に行ってもらうのを頼むことになります。シフトの始めであるレポート中に、入浴介助で手が離せない時間帯がある場合は、同僚に「今日は11時から入浴介助で電話が取りにくいから、ヨロシクね!」と予め情報をシェアし頼んでおきます。誰かの転倒があった場合も、チームワークが発揮される時です。1人はナースを呼び、1人は入居者の側に待機、1人は他の入居者をみるといった具合に、臨機応変に皆で対応していきます。
マルチタスクにおいても、朝のケアが忙しい時間の例をあげて説明します。担当入居者が15人もいたら、なかなか起きてくれない人もいます。だから、その人だけを起こすのに部屋にとどまらず、どんどん別の入居者のケアも同時進行しています。一人の入居者の部屋の電気をつけて、「起きる時間ですよ!」と声掛けをします。すぐに起きてくれそうになかったら、次の部屋で既に起きている人の身支度のお手伝い、次の部屋では薬の準備をしながらランドリーを始め、また最初の部屋に戻るといった感じです。このように常に効率を考えながらタスクをこなしていくので、マルチタスクが非常に養われます。
介護士の仕事はチームワークとマルチタスクが得意になるので、転職を考える場合でも、その後の就職先でも役に立ち、企業に重宝される人になることは間違いないです。
視野が広がり、柔軟な考えと対応ができるようになる
介護の仕事は、より入居者の気持ちを汲み取り、彼らのことを理解しなくてはいけない仕事です。入居者を理解すると言うことは、性格や病歴、健康状態だけではありません。彼らの家族構成、言語、文化、宗教・・・・できるだけ情報を収集し理解し、ケアに役立てていきます。
介護の仕事を通じて、色々な国の言語や文化にも触れる機会が増えました。日本人でハッキリ自分の意見が言えない人が多いように、それぞれの国や文化によっても接し方を考慮します。もちろん、そこに個々の性格も影響するわけですが、やっぱり国によって特徴がでる言動もあるので、毎日が観察と学びで新鮮です。
いろいろな人や文化や慣習があるもんだなあ~と知ることで、よりいっそう視野が広がり、良い意味で自分のこだわりが軽減され、生きるのが楽になりました。介護士は、いわば24時間入居者と密着して過ごすようなものなので、以前は知りえなかった彼らのオフの姿も分かり、よりいっそう他人への理解力が深めることができました。
よく一般で知られているところで言えば、中国人入居者は水でなくお湯を飲むなど、目の当たりにすることによって慣習が分かったり、その国の年中イベントに家族が入居者を連れ出すことで、様々な文化も学ぶことができています。普通に暮らしていたら、知らなかった知識です!
命の尊さ、日々の"健康"をありがたく思える
介護士として働き、肉体的・精神的な老いの苦労や寂しさが分かる分、今ある健康を、更に感謝するようになりました。
老いや病気は、寝ることも、食べることも、歩くことも、出かけることも、排泄することも、家族や友達に会うことも、全てにおいて影響します。介護士の私たちは、それを憂いる多くの入居者を側で見ているので、今ある健康が尊いものだと、人より理解していると思います。もちろん介護の現場が忙し過ぎたり重労働で、自分達の健康を害することがあるのは、なんとも皮肉なことですが・・・・。
観察力を普段から養っているので、ちょっとした自分や家族の異変も気づきやすいです。実際に介護をしているので、どうすれば病気になりにくいかや、どう部屋のレイアウトをすれば転倒しないかなど、予防の知識も豊富にあります。問題が自分達で解決できない場合の、適切な相談ルートも分かっています。
介護のリアルな現場を知っているだけに、介護の世話になりたくないのは本音です。だからこそ、普段の食生活、睡眠、運動にも気をつけています。介護士になってから、健康を強く意識するになれました。
介護士はターミナルケアにも携わるので、人の最期から命の尊さと多くの学びを得ます。これまで筆者も100人以上の入居者と死別がありました。普段から気難しく喋りにくかった人も、死に直面していくと、苦悩や不安、寂しさを漏らしてくれることもあります。残さなければいけない最愛の家族のこと、これまでの感謝の気持ち、自分より先に逝った懐かしい親友のこと、昔の心和む思い出話など・・・・もしかしら、家族にも打ち明けられない本音を私たちに伝えてくれてることもあるかもしれません。このような時は、身が引き締まると同時に、入居者が安心して新しい旅支度ができるように、一生懸命寄り添いお手伝い(ケア)をしようと心に誓います。
死別は、プロとしてのふるまいは慣れますが、精神上では慣れることはないです。その度に命の尊さを実感し、他の入居者に経験を生かそう、より良いケアしていこうと新たに思います。周りの家族や友達、同僚と過せる毎日は永遠じゃないので、大切にしようとも思えるのです。自分が人生の最期を迎える時の心構えもできていくし、今、この瞬間を大事に生きようと思えるようにもなります。他の職種では味わえない、介護士になってこそ!の感情や考えではないでしょうか?
実母は、緩和ケア病棟から旅立ちました。闘病中に私たち以上に、母が”死”への覚悟を漏らしていたのが、当時の介護士にでした。母が他界してから介護士から聞き、側でメンタルを支えてくれていた方々に深く感謝しました。介護士は、”人の人生”に深く関われる素晴らしい仕事だと思っています!
カナダで介護士になって良かったこと、まとめ!
介護士になって良かったこと、たくさんあります!
綺麗ごとばかりじゃないのは事実ですが、余りにもネガティブなイメージが世間一般で先行してしまっているのが少し残念で、こうして記事にしてみました。もっと日本も他の諸外国のように介護士の賃金や労働条件を改善して、1人でも多くの介護士が増えてくれることを期待します。世界的にも医療従事者は不足していますので、今後の高齢化社会に向けて、介護に興味を持つ人が増えていってくれれば嬉しい限りです。
「人間、誰でも平等に老いていく」
AIなどのテクノロジーが私たち人間の代行をすることが増えてきても、介護の現場は、まだまだ”人”ありきだと思っています。
いつか一緒に皆さんとカナダの介護の現場で仕事ができるようになるのを願って止みません!