こんにちは、カナダの高齢者ケアホームで介護士(Resident Assistant)として働いているTofu(とうふ)【@eigodekaigo】です。
カナダで介護士として働くためには、さまざまな試験をクリアする必要があります。その中でも、特に大きなハードルとなるのが"シナリオテスト"でした。
筆者自身も、バンクーバーにある公立カレッジ、Vancouver Community College (VCC)でHealth Care Assistant (HCA) プログラムを受講し、このシナリオテストに挑みました。
クラスメイト全員が緊張し、苦戦したこのテストですが、一度の挑戦でパスすることは不可能ではありません。今回の記事では、このシナリオテストの内容や、テストに合格するための具体的な対策を、筆者の体験を基に徹底解説します。カナダで介護士を目指す皆さんの一助となるよう、ぜひ最後までお読みください!
シナリオテストに備えて、放課後にLABに残って何度も繰り返し練習したのが懐かしいです。そのお陰で、全てのシナリオテストを、筆者は追試なしで一発合格しました。最初は緊張でドキドキでしたが、しっかり練習して準備すれば、自信を持って本番に臨めます。これから挑戦する皆さんも大丈夫、応援しています!
カナダの介護(HCA)コースの "シナリオテスト" とは?
Personal Care & Assistance コース
カナダで介護士として働くためには、特定のプログラムや試験をクリアする必要があります。筆者がVancouver Community College (VCC)でHealth Care Assistant (HCA) プログラムを受講していた際に経験した重要な試験が、"Personal Care & Assistance" コースに含まれているシナリオテストでした。
この"Personal Care & Assistance" コースは、介護において非常に実践的な内容が求められ、授業とLAB実習の両方で成り立っています。授業では、他のコースで学んだ理論を実際の介護スキルに応用し、地域社会や介護施設におけるケアの場面において、介護される方々の快適さや安全性、そして自立を保つための技術を習得します。LABでは、実際に手を動かしながら学ぶことで、シナリオテストに向けた実践的な準備を行います。
シナリオテストは、このコースの最も緊張する部分であり、学生は現場で実際に直面するシチュエーションを想定して、適切な対応を求められます。この試験をパスすることで、介護士として必要なスキルと判断力を証明できます。
楽天市場Personal Care & Assistance で学ぶこと
引用元: https://www.vcc.ca/programs/health-care-assistant/ (2023.09.15)
- Problem-solving when carrying out care-giving procedures.
- Asepsis and prevention of infection.
- Promoting comfort and rest.
- Promoting personal hygiene.
- Moving, positioning and transferring a client.
- Bedmaking.
- Promoting exercise and activity.
- Assisting with dietary intake
- Promoting urinary and bowel elimination.
- Home management.
"シナリオテスト" の詳しい流れとアドバイス
Personal Care & Assistanceの授業では、理論とスキルを学び、LAB(実習室)でそれを繰り返し練習します。その後、インストラクターの前で介護する側と介護される側(レジデント)に分かれて実際にパフォーマンスを行うのがシナリオテストです。
筆者が受講していた時は、4つのシナリオがあり、それぞれの内容を全て理解したうえでテスト当日までにしっかりと練習を積みました。試験当日にはランダムにシナリオが選ばれ、1時間の制限時間内にそのシナリオに沿って対応します。時間内に終わらせることが重要で、早すぎても遅すぎても合格にはなりません。
また、レジデント役を務める学生は、テスト中にヒントを出したり協力をすることは許されておらず、終始レジデントとしての役割を果たさなければなりません。シナリオによっては、移動介助の際にアシスタントが必要になる場合がありますが、別の学生をどのようにアレンジするかも評価に含まれます。特にメカニックリフトの使用は基本的に2人で行い、この操作も正確に行う必要があります。
テストの最終評価は"Satisfactory"(合格)か"Unsatisfactory"(不合格)で判断され、細部までしっかり評価される厳しい試験です。
LAB とは
ベッドやメカニックリフト、車椅子、介護に必要な様々なアイテムも含めて、実際の介護現場と同じような環境が整えてある部屋で、学生は実践的なスキルを身に付けていきます。
"シナリオテスト” の評価ポイント
シナリオテストでは、以下のポイントが厳しくチェックされます。これらの基準をしっかり理解し、テスト前にしっかり準備することが大切です。以下は、テストの評価ポイントとアドバイスです。
Skills performed
LABで学んだマニュアル通りに正確にパフォーマンスできるかが評価されます。動作ひとつひとつが正確かどうか確認し、手順を忘れないように練習しましょう。実際に何度も体を動かして、体に覚えさせることが大切です。
Organization
担当するレジデントの日常生活動作(ADL)をしっかりアセスメントし、その結果に基づいて適切なケアプランを実行する能力が評価されます。さらに、与えられた1時間内で全てのケアを終えるタイムマネジメントも重要です。時間配分に気をつけて練習し、余裕を持って進められるようにしておきましょう。
Safety
介護する側とレジデントの両方の安全を守りながらケアができているかが評価されます。例えば、ベッドの高さや車椅子のブレーキなど、細かい安全チェックを忘れずに行うことが重要です。安全確認は必ず習慣づけてください。
Medical asepsis
"Clean"と"Dirty" の区別をしっかり理解し、感染予防を徹底できているかがチェックされます。手袋や消毒のタイミングを間違えないよう、感染予防の手順をしっかり守りましょう。
Body mechanics
レジデントの移動やケアの際に、正しい体の使い方ができているかが評価されます。腰痛などの業務上の疾病を予防するため、正しい姿勢や動作を練習しましょう。LABで学んだボディメカニクスの基本に忠実に従うことが大切です。
Communication
テストでは、挨拶からケアの説明、レジデントへの誘導まで、適切なコミュニケーションが取れているかもチェックされます。優しく丁寧な声かけや説明が大切です。自分が説明される側の立場になって、分かりやすく伝える練習をしましょう。
インストラクター(試験官)は、6つのポイントをしっかり見ているので、テストは最後まで気が抜けません。シナリオテストは技術だけでなく、タイムマネジメントや安全確認、コミュニケーション能力など、総合的なスキルが求められる試験です。焦らずにひとつひとつの項目をしっかり確認し、十分な練習を重ねましょう。特に時間配分や安全確認はミスしやすいポイントなので、テスト前に意識的に練習することが成功のカギです。
" シナリオテスト " のサンプル
" Mr.Smith is a 95 years old with Parkinson's disease. Following his ADL and Care Plan, Please him ready for breakfast. "
「Smithさんは95歳で、パーキンソン病を患っています。彼の日常生活動作(ADL)とケアプランに従って、朝食の準備をしてあげてください。」
シナリオを渡されたら、まずはレジデントの情報をADLとケアプランから収集することが大切です。
例えば、眼鏡や入れ歯、ヒアリングエイドが必要かどうか、食事や運動能力、移動の介助が必要か、また言語の状況や特別に配慮すべき点があるかなどを確認します。
これらの情報をしっかり整理して、落ち着いてパフォーマンスすることが求められます。テストに合格するためには、どのシナリオがアサインされても間違えずにケアができるよう、みんな必死に練習していました。
シナリオテストでは、相方になるクラスメイトとの相性が合わなかったり、どちらかが放課後忙しくて先に帰ってしまったりすることもあり、練習が思うようにできないクラスメイトもいて、気の毒でした。幸い、私の相方は一生懸命取り組む子だったので、ラッキーでした!練習の時間がしっかり取れることは、シナリオテストに向けて大きな助けになります。
" シナリオテスト " 当日
インストラクターの前では緊張してしまうのは当然です。大切なのは、どんなシナリオが渡されてもパニックにならずに大きく深呼吸し、最後まで諦めないことです。
また、身だしなみも評価の一部です。実際の現場さながらに、ユニフォーム(スクラブ)を着て、ネームバッジをつけた状態で相方のクラスメイトとLABへ入室します。テストは手洗いから始まり、決められた2分間をしっかり洗わないと減点されるので注意が必要です。
私がテストで当たったシナリオは、クラスメイトの間で最も難しいとされていたものでしたが、1時間全力でベストを尽くしました。緊張すると、笑顔や会話が少なくなりがちですが、インストラクターはコミュニケーションの部分も評価しているので、笑顔を絶やさないことが大事です。
私がミスをしてしまったのは、テストがあと少しで終わるという時でした。清拭用のスプレーをサイドテーブルから落としてしまったのです。無我夢中でしたが、床に落ちたものは「Dirty(汚い)」という扱いになることを瞬時に思い出し、新しいスプレーを用意してケアを続けました。
無事にケアが終わり、再度手洗いをして、インストラクターがナース役となり、最後に口頭レポートを行いテストが終了しました。そして、レジデント役の相方が退室してから、インストラクターとのテスト振り返り査定が始まります。
その時、私はスプレーを落とした際の行動について確認されました。落としたものは「Dirty」とみなされるので拾わずに新しいものを使ったことや、落としたものは後で拾い消毒する必要があることを説明しました。インストラクターが評価表に書き込んでいる間の沈黙は、心臓の音や時計の針の音だけがやけに大きく感じました。
そして、" Congratulations! You passed the test." というインストラクターの笑顔とともに評価表を手渡された時の喜びは、今でも鮮明に覚えています。さらに、廊下で結果を待っていてくれたクラスメイトが一緒に喜んでくれたことも、カレッジ卒業から10年以上経った今でも忘れられません。
介護学生の皆さん、テストは緊張しますが、準備と冷静な対応が成功のカギです。頑張ってください!
後で分かったことですが、シナリオテストは合格させるためというより、むしろ落とすためのテストだったようで、初回でパスする人は少なかったそうです。英語が得意ではない私が初回でパスできたのは、それぞれのシナリオでチェックすべきポイントをしっかり理解し、それをケアにきちんと反映させることができたからだと思います。
もちろん、4つのシナリオは何度も繰り返し練習しました。LABでの練習だけでなく、家族にレジデント役をお願いして、家のベッドでも練習を重ねました。この準備のおかげで、テスト本番でも落ち着いて対応できたのだと感じています。
" シナリオテスト " にパスしやすいポイント8選!
ポイント8選
1 : レジデントの情報を深く理解し、メモを作成
シナリオごとにレジデントの情報をしっかり理解し、重要なポイントをまとめたカードを作成しましょう。
2 : 要点を箇条書きで整理
テスト当日に頭が真っ白にならないように、やるべきケアの要点を箇条書きにして整理しておくと安心です。
3 : ミスしてもパニックにならない
万が一何かミスしても、慌てずに落ち着いて行動し、最後までやり遂げることが大切です。
4 : クラスメイトと協力して練習
相方のクラスメイトと息を合わせるため、Labでできる限り一緒に練習し、協力し合いましょう。
5 : インストラクターに質問し、努力をアピール
Labや授業中にインストラクターに積極的に質問をし、努力している姿勢を見せることも大切です。
6 : ユニフォームやネームタグを忘れない
テスト当日はユニフォームやネームタグを忘れずに準備し、しっかりした身だしなみで臨みましょう。
7 : 自宅でも練習を重ねる
自宅ではメカニックリフトがなくても、ケアプロセスを頭に描きながらエアで練習して準備を万全に。
8 : 笑顔をキープし、コミュニケーションを意識
緊張しても、笑顔を忘れずに、言葉が少なくならないように意識し、レジデントへのコミュニケーションを大切にしましょう。
最後の最後で「手洗い」を忘れてしまい、合格できなかったクラスメイトもいるので、気を抜かないように注意しましょう。
シナリオテストには、介護の基本スキルがしっかりと網羅されています。このテストで身に付けたスキルは、後に就職してからも役立つものです。ですので、一生懸命練習しておくことは決して無駄になりません。とにかく、頑張ってください!