こんにちは、カナダの高齢者ケアホームで介護士(Resident Assistant)として働いているTofu(とうふ)【@eigodekaigo】です。
2025年を迎え、社会は新型コロナウイルス感染症との共存を続けています。日本では2023年5月に感染症法上5類へ移行し、カナダでも規制がさらに緩和され、以前のような検温やマスク着用義務がなくなりました。
筆者の働く施設でも、スタッフ同士がマスクなしで顔を見て笑顔を交わせる日常が戻っています。しかし、これにより感染症対策の重要性が薄れることはありません。特に高齢者や免疫が弱い方々がいる環境では、風邪やインフルエンザ、新型コロナウイルスを防ぐ努力が欠かせません。
この記事では、感染症予防の「基本の基本」である正しい手洗いを改めてご紹介します。介護現場では「1ケア1手洗い」が当たり前ですが、これは家庭でも応用できるシンプルかつ効果的な方法です。
パンデミックを経た今だからこそ、感染症を防ぐための行動を習慣化し、高齢者や周囲の方々の健康を守りましょう。
"Health Care Assistant" コース受講中、インストラクターから何度も繰り返し「手洗いの重要性」を教えられました。その度に、感染症予防の基本である手洗いが、介護現場においてどれほど大切な役割を果たすかを実感しました。
なぜ手洗いは重要なの?
介護現場では、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの感染症の多くが接触感染 (Contact Transmission)を通じて広がることが知られています。私たちの手には、日常生活の中でさまざまな細菌やウイルスが付着しています。その手で顔を触ったり、物や他の人に触れたりすることで、感染が広がってしまうリスクがあります。
特に、目・鼻・口といった粘膜はウイルスが体内に侵入する入り口となりやすい場所です。ある調査では、人は無意識に顔を触る回数のうち、約44%がこれらの粘膜部分に触れているとされています。このため、手洗いを徹底し、感染を広げないようにすることがとても重要です。
「1ケア1手洗い」を実践することで、入居者や同僚、そして自分自身の健康を守ることができます。手洗いは、一見地味な行動に思えるかもしれませんが、感染症予防の第一歩として欠かせない大切なケアの一つです。家族介護者も、大切なご家族を守れます!
介護職の手洗いのタイミング
介護の職場では、主に以下のような場面で手洗いをおこなう必要があります。
主な手洗い場面
- 入居者と接する前後
- 入居者の食事の準備と介助時
- 入居者の排泄介助時
- 感染物として取り扱うものに触れた時
- 手袋を脱いだ時
- くしゃみや咳をした後、鼻をかんだ時
- 出社時、退社時、休憩前後
『出典:厚生労働省HPより』
手洗いの手順
手洗いは、感染症予防の基本中の基本ですが、「正しい手洗い」の方法をきちんと実践できている人は意外と少ないかもしれません。
特に介護の現場では、適切な手洗いが入居者や同僚の健康を守るために欠かせません。水と石鹸を使った手洗いは、アルコール消毒では落とせない汚れや菌も除去できる、最も効果的な方法です。
手洗い前に、爪は短くして、時計や指輪などのアクセサリーは外しましょう!
手を濡らす
手洗いの最初のステップは、「流水で手を濡らす」ことです。この過程は、石鹸の効果を最大限に引き出し、手に付着した汚れや菌をしっかりと落とす準備として重要です。まず、水道水を使い、流れる水で手を濡らします。たまり水では汚れを完全に落とすことが難しいため、必ず流水を使用するようにしましょう。また、水温にも注意が必要です。冷たすぎる水では石鹸が十分に泡立たない場合があり、逆に熱すぎると肌を乾燥させる原因になるため、適度なぬるま湯(約20~40℃)を選びます。
手全体が均一に濡れるようにすることも大切です。手のひらだけでなく、手の甲、指の間、指先といった細かな部分まで水を行き渡らせるよう意識しましょう。これにより、次の石鹸を使うステップで、汚れや菌をしっかり包み込んで洗い流すことができる状態を整えます。一見簡単な動作ですが、この「手を濡らす」という基本を丁寧に行うことが、正しい手洗いを始める第一歩となります。
石鹸を使う
次に行うのは「石鹸を使う」ステップです。この過程は、手の表面に付着した汚れや菌を効果的に除去するために欠かせません。適切な量の石鹸を使い、手全体に広げることで、手洗いの効果を最大化できます。
まず、石鹸を手のひらに出します。使用する量は、500円玉大を目安にするとよいでしょう。量が少なすぎると十分に泡立たず、手全体をカバーできない場合があります。逆に多すぎると洗い流す際に無駄が生じることがあるため、適量を意識してください。
石鹸を手のひらに出したら、もう片方の手を使って軽くこすり合わせ、石鹸を広げていきます。泡立てながら、手全体に均一に広げるよう意識しましょう。この時点で、指先や指の間、手の甲など、手のあらゆる部分に石鹸が行き渡る準備を整えます。
石鹸を使う際のポイントは、ただ広げるだけでなく、十分に泡立てることです。泡が多いほど、手の表面に付着した汚れや菌を包み込み、洗い流しやすくなります。この「石鹸を使う」ステップを丁寧に行うことで、次の「こすり洗い」の過程がスムーズに進み、手洗いの効果がさらに高まります。
手をこすりあわせる
「手をこすり合わせる」過程では、手洗いの中でも特に汚れや菌を取り除くための重要です。ここでは、泡を立てながら、手全体を丁寧に洗うことで、目に見えない汚れや病原菌をしっかり落とします。
まず、両手のひらを密着させ、円を描くようにこすり合わせます。この動作で、石鹸をしっかり泡立てます。十分な泡が手全体に広がると、汚れや菌が効果的に浮き上がり、洗い流しやすくなります。
次に、片方の手の指をもう片方の手の指の間に差し込み、指を組み合わせるような形にします。この状態で、指の間を念入りにこすります。指の間は特に汚れや菌が溜まりやすい部分ですので、見逃さないように注意が必要です。
指先を洗う
「指先を洗う」過程は、手洗いの中でも特に重要です。指先や爪の間は汚れや菌が溜まりやすい部分であり、介護現場では念入りな洗浄が求められます。片方の手の指先をもう片方の手のひらに押し付け、円を描くように動かしながら洗いましょう。親指も手で包み込むようにしてこすり、爪先や付け根までしっかり洗います。必要に応じて爪ブラシを使うと、爪の間の汚れを効果的に取り除けます。
また、介護現場ではネイルポリッシュを控えることが推奨されます。理由は、剥がれたポリッシュが清潔を損ないやすく、爪の下の状態が確認しづらくなるからです。爪を短く整え、清潔に保つことで、感染リスクを最小限に抑えることができます。
手首を洗う
手洗いの最後に、手首も忘れずに洗いましょう。手首は見落とされがちですが、細菌や汚れが付着しやすい部位です。片方の手のひらでもう片方の手首を包み込み、前後に動かしながらこすります。この動作で、手首全体に石鹸を行き渡らせ、汚れをしっかり落とします。
左右の手首を交互に同じように洗い、清潔を保ちましょう。手首までしっかり洗うことで、手洗いの仕上げが完了します。感染症予防のためには、この工程も省略せずに丁寧に行うことが大切です。ここまでの時間の目安は、少なくとも20秒以上になります。
手をすすぐ
手洗いの仕上げとして、「手をすすぐ」過程を丁寧に行いましょう。まず、流水を使って手全体を洗い流します。手のひら、手の甲、指の間、指先、爪の間、そして手首まで、石鹸や泡が残らないようにしっかりと流します。
特に指の間や爪の周りは、石鹸が残りやすい部分ですので、手を動かしながらよく確認してください。石鹸が肌に残ると乾燥やかゆみの原因になることもあります。目視で石鹸が残っていないことを確認することが大切です。
流水を使うことで、手に付着した汚れや菌を物理的に流し去り、手洗いの効果を最大限に高めることができます。この最終工程を丁寧に行うことで、清潔で健康的な手を保てます。
手を乾かす
手洗いの最後は、「手を乾かす」ですね。濡れた手は菌やウイルスが付着しやすいため、流水で洗った後はしっかり乾かすことが必要です。
清潔なペーパータオルを使い、手全体の水気を丁寧に拭き取ります。手のひらや手の甲だけでなく、指の間や指先、手首までしっかりと乾かすよう意識しましょう。
ペーパータオルがない場合は、エアタオルを利用するのも一つの方法です。ただし、共用タオルの使用は避けるのが無難です。共用タオルは細菌の繁殖リスクが高く、せっかく洗った手を再び汚染する恐れがあるからです。
水道の蛇口は、洗った手で直接触れず、必ずペーパータオルで濡れた手の水気を拭き取った後に、使ったペーパータオルを使って止めましょう。これにより、洗った手が再び汚染されるのを防ぐことができます。
汚れが残りやすいところ
手の汚れが残りやすい部分
- 親指の周り
- 手首
- 指の間
- 指先や爪まわり
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まとめ
介護施設では、感染症予防の第一歩として、特に丁寧な手洗いを心がけることが大切です。入居者は高齢で免疫力が低下していることが多いため、手洗いの徹底が感染を防ぎ、健康を守る重要な鍵となります。
手洗いの際は、石鹸をしっかり泡立て、手のひらや手の甲、指の間、指先、爪の間、手首まで、手全体に泡を行き渡らせましょう。手のしわや細かな部分にまで石鹸が届くことで、より効果的に汚れや菌を除去できます。
また、介護職としては、爪を常に短く清潔に保つことが基本です。爪が長いと汚れが溜まりやすく、感染リスクが高まるため、注意が必要です。さらに、職場では指輪やブレスレットなどのアクセサリーを外して働くことが推奨されます。アクセサリーは手洗いの妨げになり、汚れや菌の温床となることがあるからです。
介護現場では「1ケア1手洗い」を心がけることが、入居者だけでなく自分自身や同僚の健康を守ることにつながります。日々のケアの中で、手洗いを一つひとつ丁寧に行うことで、安全で安心な環境を提供していきましょう。
手洗いの目安として推奨されている時間は、介護の学校では「ハッピーバースデー」の歌を2回繰り返す方法が紹介されました。この歌は世界中で知られているため、誰でも簡単に実践できますよね!